太っていないⅡ型糖尿病

太っていない人が2型糖尿病になる仕組みと予防方法

 

 生活習慣病といわれる「2型糖尿病」は太っている人の病気と思われがちですが、それはどうも問違っているといわれるようになってきました。

 

 日本を含むアジア人種では痩せている人でも欧米人より糖尿病になりやすいことがわかってきました。

 

 2型糖尿病は進行はゆっくりですが、神経障害や腎臓病、目の網膜症など合併症が起きやすいことで知られています。

脳梗塞や心筋梗塞のリスクも高まります。

2型糖尿病の患者では血糖値を下げるインスリンが不足したり、出ているのにその効きが悪循環的に悪くなるというインスリン抵抗性の問題も出てきます。

 

 


インスリンの効きを悪くする筋肉と肝臓の脂肪!!

 1960年代の研究で、アメリカ・ハワイ州で、白人より日系人の方が糖尿病発症率が高いことなどが

判明しており、この時の研究で、欧米人は皮下脂肪が厚くてインスリンの分泌も多い人が多く、多少太っていてもインスリン抵抗性は低い。

一方、日系人を含むアジア人は、普通の体格や痩せた人でも同程度の体格の欧米人よりインスリン抵抗性が上がってしまい、糖尿病の発症リスクが高くなりがちの人が多いこともわかりました。

 体格指数(BMI)が25未満である非肥満の日本人男性のインスリンの効きを詳細に調べた研究では、インスリンが正常に働けば血液中の糖は筋肉に取り込まれて急激に減少するはずなのに、一見健康と思われていた人にも、インスリンの効きが悪いために血糖値が高めの人が多数いることがわかったそうです。

 インスリンの効きの良い人と比べると、インスリンの効きが悪い人は中性脂肪が多めで体脂肪率が高く、皮下脂肪や肝臓、そして筋肉細胞の脂肪が高め、日常生活の活動量が少なめといった特徴もあるそうです。

 体内脂肪の正常な溜まり場所は、皮膚と筋肉の間の皮下脂肪と、お腹の腸周辺につく内臓脂肪です。腸は免疫組織でもあるので、免疫の働きをする白血球の活動エネルギーになる脂肪を適量蓄えるのは健康維持に欠かせません。ここに適量の脂肪が蓄えられない痩せすぎは、病気に対する抵抗力が乏しくなるので、内臓脂肪が少なすぎるのも良くないのです。もちろん、メタボといわれるほど溜めすぎも良くありません。

 

 


10キロ増えている人は目指せ3キロの減量

運動不足が続くと、血糖の多くを受け入れる筋肉に脂肪が溜まる危険が出てきます。筋肉は本来は脂肪が溜まるところではありません。本来溜まらないところに溜まってしまった脂肪を「異所性脂肪」といいます。肝臓に溜まれば脂肪肝、筋肉に溜まれば脂肪筋といいます。アジア人種は遺伝的に異所性脂肪が溜まりやすい体質なのです。心臓に異所性脂肪がつけば命取りになります。

 筋肉でインスリン抵抗性が起こる脂肪筋ができるようになると、より沢山のインスリンをつくろうとして膵臓が酷使され、やがて膵臓がくたびれてきてインスリンの分泌自体が悪くなる悪循環、つまり2型糖尿病に陥りやすくなるわけです。

 痩せた女性では、もともと筋肉が少ないので、その筋肉細胞に脂肪が溜まった人ほど高血糖のリスクが高くなりやすいのです。

 親族に糖尿病の人がいるなど遺伝的背景がある人は特に気をつけたいですし、若い頃より10キロ以上体重が増えた人は、男女共、まず3キロの減量を心がけたいものです。

 

 たとえるなら皮下脂肪、腸周りの脂肪は定期預金、肝臓や筋肉の脂肪は普通預金みたいなもので、後者は溜まりやすく減らしやすいという特徴があるので、食事の改善と日常の運動を組み合わせて後者から先に減らすのが望ましいことになります。


隠れ糖尿病

 痩せているのに糖尿病という人は、想像以上に多いといわれますが、これは痩せている人の多くは、糖尿病というのは太っている人がなる病気だから、自分も糖尿病になる可能性があるという自覚を持っていない人が多いためといわれています。

 しかし、異所性脂肪が溜まる人は痩せている人の方がその危険性が高いのです。検診などで血糖値が高めに出ていても、軽く考えてパスしてしまう人が多いためともいわれます。

 空腹時の血糖値は異常高値でなくても、食後の血糖値が基準を大きく超える人がいます。このような状態は「隠れ糖尿病」といわれ、空腹時の血糖検査だけでは見逃されてしまいがちです。

 また、血糖値スパイクといって、食後に急角度で血糖値が上がり、2時間後には急角度で下がって正常値を示す人も多くいます。

 糖尿病は、目がやられて失明、腎臓がやられて透析、足の神経がやられたあげくの壊疸といった合併症が命取りになる現代病です。これを防ぐには食事面と運動面の対策が基本になります。ビタミンはB群全て、ミネラルは亜鉛とマグネシウムを必要充分量、毎日欠かさず摂り続けることが合併症を防ぐ上で大事になりますが、その前に糖質の摂りすぎには特に注意が必要になります。

 筋肉と肝臓の異所性脂肪を防ぐには、脂質の摂り方にも注意を払う必要があります。糖質制限のしすぎで、カロリー確保の必要から脂質摂りすぎにならないよう、また、マーガリンーショートニングーキャノーラオイルの三悪脂質は摂らないよう、また、大豆も発酵させたものか圧力加熱調理したもので、レクチンを分解させたもの以外は食べない調理を大事にしたいものです。小麦はグルテンと、それ以上に危険な胚芽凝集素を避ける習慣を身につけましょう。

 痩せの大食いという言葉がありますが、痩せている人でも食欲は太っている人以上のことが多いので、気をつけたいものです。糖尿病対策としては、小食にして時間をかけてよく噛んで食べるというのがよく効くのです。唾液は強力なレクチン対策にもなります。

 1日の中で座っている時間が長い人ほど糖尿病や認知症になりやすいということもありますから、座る時間を短くするためにも特に下半身を鍛えることは筋肉や肝臓の異所性脂肪を少なくするのに必要と心得て、毎日の程良い運動を習慣づけたいものです。毎日の運動は、インスリンの効きを良くすることを目標に、全身の筋肉を満遍なく使って脂肪筋にならないようにしたいものです。

 

 また、筋肉はお尻からつま先までの下肢が約7割といわれていますから、毎日、少なくとも5千歩を目標にインターバル速歩を習慣にしたいものです。この時、悪い姿勢のまま歩くと、加齢に従って膝を痛める人が多くなるので、姿勢を正して歩くということが大事になるということも、いつも頭に置いておきたいものです。