アルツハイマー予防に「葉酸」

 今、ビタミンの一種である「葉酸」の毎日の充分な摂取が、アルツハイマーも防ぐ力があるとわかってきて、「葉酸」に熱い視線が注がれており、テレビの健康番組でも大きく取り上げられる機会が増えています。

 老化克服の仕組みの一つである毎晩睡眠中に活発に起こる新陳代謝での細胞分裂も、妊娠中に起こる胎児の細胞を増やすための細胞分裂も「葉酸」不足だとうまくいかないといわれていて、妊娠したら「葉酸」不足にならないよう食べ物に注意するよう教育されてきましたが、ここに来て「葉酸」の重要性は妊娠中だけでなく、日々老化していく全ての人に、老化で起こる健康面でのマイナスを減らすのにとても大事な栄養素だということが、学問の進化の中でわかってきたのです。


当初ビタミンMと呼ばれた「葉酸」

当初ビタミンMと呼ばれた「葉酸」ビタミンはA、B、C、Dと発見順や発見由来にちなんでアルファベットがつきますが、「葉酸」はもともとは猿の貧血を防ぐ食べ物から発見されたためビタミンMONKEY、略してビタミンMと名付けられました。

  今では、葉っぱに沢山含まれているので「葉酸」と呼ばれ、研究が進むにつれて健康維持や寿命、脳の若さを保つのに大変重要なビタミンだということがわかり、今、世界的に大きな注目を浴びるようになっています。


では、どれくらいの量をとったら良いのか。WHO(世界保健機関)では毎日400マイクログラムとりましょうと呼びかけ、多くの先進国では10年くらい前から「葉酸」を加えていない穀物は売ってはいけないと法律で決めています。

  ところが日本では、旧態依然の支配的栄養学者がDNAをつくる時に欠かせない「葉酸」の必要性・重要性が認識不足で、240マイクログラムとれば良いとし、穀物に「葉酸」を添加せよとの法律など未だになしです。そのためか、国民の間でもなじみが薄く、唯一、妊娠中に「葉酸」不足だと新生児が障害を持って生まれてくる危険性があることに気がついた保健当局は、妊娠中はサプリを使っても良いから480マイクログラムとりましょうというようになりました。

  サプリメント一般に冷ややかな態度をとることが多い保健当局がこのようにいうようになったのは、「葉酸」不足は新生児にいかに深刻な事態を招くかということに気がついたからだといわれています。


 ちなみに私どもは、妊娠中でなくても、まともに生きていくのに欠かせない微量栄養素は、何も「葉酸」だけでなく、他のビタミンやミネラルも不足を放置するよりはサプリメントを使って日々確実に摂取する方がベターだと考えています。

  「葉酸」を沢山含む食品としては、ほうれんそう、ブロッコリー、小松菜、ニラ、春菊などの葉物野菜、枝豆、納豆、豆腐、豆苗、オクラ、アスパラガス、サニーレタス、お茶、海苔などが知られています。調理は、水溶性なので煮る場合は煮汁ごと、さらには蒸した方が効率良くとれます。

 また、ほうれんそうにはシュウ酸が多く含まれるので、とり過ぎると尿路結石の危険が増えることも知っておきましょう。


「ホモシステイン」を減らし、改善してくれる「葉酸」

人体の中で生化学工場といわれる肝臓は、時として血液中で悪玉の働きをするホモシステインという、活性酸素を出して大事な細胞膜を傷つける分子をつくってしまうことがあります。その被害は肝臓自身の他、脳・骨・血管にとって特に困った存在になります。化させることは困難だとされてきました。この困ったちゃんを「葉酸」は減らして無害なものにするだけでなく、マイナスを転じてプラスにする働きもしてくれます。そんな成分は「葉酸」だけともいわれています。

 「葉酸」は植物が太陽に当たることで、葉の細胞でっくり出す自然の恵みです。人間にこの「葉酸」が食べられて吸収され、血液で全身の組織に運ばれると、ホモシステインのマイナス作用で傷ついた組織は、「葉酸」の働きでマイナス作用がプラス作用に転じ、傷は癒やされ、その組織本来の働きをするようになるというのです。

 その顕著な例が脳、骨、血管で観察されるとか

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脳が守られ、ベーダアミロイドとかタウ蛋白とかの蛋白質系のゴミが大幅に減れば、アルツハイマーも防げるといわれます。「葉酸」に富んだものをきっちり食べ続けていると、年はとっても若々しい脳のままでいられ、高齢者特有の脳の縮みが見られないというのです。

 ちなみに認知障害を起こしている高齢者は軽度認知障害でもMRIなどで調べると、殆どの場合、脳の萎縮が徐々に進行しているそうです。これが「葉酸」摂取量が少ない人で見られるホモシステインの怖さです。

脳神経が破壊されていくので、次第に脳がスカスカとなり萎縮が見られるようになっていくのです。この時「葉酸」がホモシステインを「良い子」に戻してくれれば脳破壊はそれ以上進行しなくなりますが、縮んでしまったところが元に戻ることはないそうです。

  だから、そうなる前から「葉酸」を毎日充分とり続け、アルツハイマーを予防し正常な脳の若さを保つことがとても大事になるわけです。


「葉酸」摂りすぎても副作用はおこらない」

 ヒトは、爪のかたちから見てもわかるように遺伝子的には肉食動物ではなく、植食動物です。そこから見ても「葉酸」とはもともと親和性があるのです。

 これが細胞レベルの若さを決めるDNAの分裂増殖に欠かせない微量栄養成分の一つだというのですから、少なくとも世界保健機関WHOがすすめる400マイクログラムは毎日とっていきたいものです。日本では、残念ながら1日平均277マイクログラムしか摂取していないそうです。

 しかし、埼玉県坂戸市では、そこにある女子栄養大学の後押しもあって「葉酸をもっと食べようさん(葉酸)運動」を展開し、老いも若きも毎日400マイクログラムとろうと啓蒙活動を盛んに展開しています。妊婦はもちろん、細胞分裂が活発な成長期の青少年、アルツハイマーが心配な高齢者、心臓発作や脳卒中が心配な壮年層に受け入れられて、とても好成績をあげつつあると全国の保健当局者からも注目を浴びています。

埼玉県坂戸市
埼玉県坂戸市

この「葉酸」はとり過ぎて副作用のようなものが出るという心配はまず考えられないので、仮に推奨量の2倍とり続けたからといって、良いことはあったとしても、健康を害するようなことはないそうです。 従来、野菜は一般的にビタミンやミネラルや食物繊維の元として注目を浴びることはあっても、特定の微量栄養素「葉酸」の摂取源というスポットライトを浴びることはなかったのです。

 しかし、「葉酸」の価値に焦点が当たっている今、野菜の価値に改めて注目したいものです。

 現代人はアルツハイマーになる前に、必要量の「葉酸」を確保し続けていくことが求められているのです。

脳が縮んでからでは、いわゆる手遅れです。今の医科学の水準では、手遅れになってしまったら諦めるしかありません。ただ、ひょっとして、もしかしたら、これをブレークスルーできる可能性が、先月号でお知らせした人間の遺伝子に7ヶ所あるサーチュイン遺伝子に働きかけ、体内時計を逆回りさせて若返らせる「NMN(ネオニコチノイドモノヌクレオチド)」かもしれません。