自然にまかせず治療する
ある日、突然、肩関節に痛みが走ったり、腕が思うように動かないといった症状が起きるのが『五十肩』です。
これは肩関節の炎症が原因の痛みで、正しくは肩関節周囲炎といいます。
肩を動かした時に細かな断裂が生じ、炎症が起きることが主な原因とされる。
腕を上げにくくなり、やがて安静にしていても痛みを感じるように。
加齢が関係していて、四十~五十代で発症することが多い。
「ほうっておいても半年、長くても1年もすれば治る」といわれています。
確かにそうですが、そのままにしておくのは決して良い方法ではありません。
自然治癒したようにみえても、実は痛くならないように肩を使うようになっただけで、炎症の痛みはとれても関節の動く範囲が制限される後遺症が残る場合もあります。
これは決して歓迎すべき治り方ではないのです。
早めの服薬、リハビリを
重症化すると手術が必要になる例もあるため、早めに投薬や運動療法といった治療を受けることが大切です。
五十肩の治療には、「安静」「薬物療法」「運動療法」が行われます。
痛みが強いときには肩が動かせません。このときは、まずは安静を守ります。三角巾を使って肩患部を固定し、左右の肩の高さを平行にして力を抜くことで、関節組織に加わる刺激を極力減らすのです。
発症から一~二カ月の急性期は痛みが強く眠れない人もいるほど。
この時期は痛みを取る注射や投薬が中心です。
肩関節周辺の筋肉をリラックスさせる、理学療法士によるリハビリも有効です。
運動療法
痛みが和らいできた時点から「運動療法」に入ります。
発症から二~六カ月の拘縮期に入ると痛みが弱まる半面、急性期より腕が動かしにくくなる。
無理のない範囲で肩関節の可動域を広げる運動療法を取り入れるといい。
発症後六カ月以上が過ぎた回復期は痛みがほとんど消え、肩の動きも良くなる。
注射などの治療はせず、運動療法でさらなる回復を目指す。
どの時期も運動療法は症状の改善に役立つが、やり方を間違えると痛みが悪化することもあります。
リラクゼション
運動療法の基本はリラクゼーションです。
肩周辺の筋肉からすっかり力を抜いて、肩関節を慢性的ストレス状態から解放します。
例えば、深くお辞儀をした姿勢から腕をダラッと垂らすと腕の重みをしっかり感じます。
これだけで肩関節も伸び、インナーマッスルといわれる内側の筋肉が自然と収縮します。
さらに、腱板トレーニングがあります。
テーブルに肘をつける姿勢で座って、肘を支点にして腕を左右にゆっくりとテーブルの上をふくように水平移動させます。
そのようなストレッチを続けることが五十肩の改善に結びつくのです。
無理な動作は避ける
予防は普段の生活で予防を心掛けることも大切。例えば、高い所の荷物を取る時は踏み台を置いて腕を伸ばしすぎないよう注意すると、肩にかかる負担は軽くなる。
特に、糖尿病の人は、血糖値を薬でコントロールしていても、関節包が硬くなりやすいため注意が必要です。
五十肩は個人差が大きいが、適切な治療や運動療法をすれば改善が期待できる。