慢性炎症

小腸内細菌増殖症

 腸内細菌は私たちの健康の味方と考えられてきました。しかし、現代人の食生活の乱れ、ストレス、抗生物質乱用などによって小腸に腸内細菌が異常に増え、腹部の張り、ガス、下痢、便秘を招く小腸内細菌増殖症が発症することがわかってきました。腸内細菌の過剰増殖で小腸に深刻な炎症が起きていることがわかったのです。小腸で起きた火事は飛び火して全身に悪影響を与えます。体のどこかに慢性的な炎症が起きていることは老化を早めると言われています。小腸は胆汁や膵液を加えることで食物の消化分解を進められ、そしてほとんどの栄養分は吸収されます。大腸では小腸で吸収できなかった食物の残りかすから、水分と少量のビタミンを吸収します。そして食物から便を作り、体外に出します。

小腸は大腸と比べて細菌の数が少ないのが正常です。小腸の中で細菌が増えすぎないように、人体の中でさまざまな防衛メカニズムが働いているからです。


生活習慣病や老化も慢性炎症が関係する

 最近の研究によって、これまで慢性炎症との関連についてはほとんど顧みられなかった病気でも、実は慢性炎症が関わっていることがわかってきました。加齢とともに増加するがん、動脈硬化、肥満、アルツハイマー病などの種々の疾患、さらには老化そのものも、慢性的な炎症性の変化によって症状が進行するのではないかと考えられる証拠が見つかってきました。最初の内は症状として現れない慢性的な炎症性の変化が、種々の病気の要因となっている可能性があるということです。その慢性炎症状態に、「自然炎症」のメカニズムも重要な役割を演じていると考えられるようになってきています。


 ヒトには存在しない細菌やウイルスの構成成分を認識するセンサーが、あらかじめ体の中に存在あります。

 細菌やウイルスが体の中に侵入すると、そのセンサーが感知し防御反応が始まるのです。

 例えば、通常は細胞の中に留まっているある種の成分が、細胞が死んで細胞外に出ると、それを体内のセンサーが感知し、炎症反応を引き起こすことが分かってきました。

 このように、体の中の成分も炎症を引き起こすのであれば、いつでも体の中で炎症が起きてしまうことになりますが、通常はそのようなことにはなりません。しかし、種々の非感染性の慢性炎症を伴う病気では、その「自然炎症」が病気の重要な原因となっていることが予測されます。


リーキーガット

 腸の粘膜が悪い生活習慣によって傷つきバリア機能が低下したために、本来腸管から漏れない物が血管に漏れてしまう病気です。

漏れてはいけない物とは以下のような物です。

・腸内細菌やウイルスやそれが出した毒素。

・未消化のタンパク質

・腸内細菌が胆汁に消化されないようにするリポ多糖類(LPS)

リーキーガットが注目されはじめた理由は、腸のバリア機能に障害が起こることで様々な病気や不調を招いてしまうことがわかってきたからです。リーキーガット症候群の原因は高タンパク、高脂質食、ストレス、抗生物質・鎮痛剤の多用、糖質や小麦のグルテンの過剰摂取、食品添加物、カフェインやアルコールの過剰摂取、精製炭水化物の過剰摂取。いずれも身近なものですが、腸内の慢性炎症との関係が深いといわれます。何らかのトラブルが原因で腸管に炎症が起こり、穴が開いたり傷がつくまでに悪化すると、食べ物が適切に消化・吸収されず、未消化の食べ物が腸から体内に取り込まれてしまいます。からだはこれを異物ととらえるので、アレルギー反応を起こします。


慢性炎症が万病の元

 リーキーガットなどで体内に漏れ出した、病原体などの異物が体内に侵入すると免疫反応が発動されて、組織が赤くなり、腫れて熱を持ち、痛むようになる。いわゆる「炎症」反応です。通常、炎症は、からだの中で起きている異常状態に対する正常な応答=防御反応で一過的なものだが、例外的にダラダラとくすぶるように続くことがある。それが慢性炎症で、ぜんそくやアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患、関節リウマチなどの自己免疫性疾患が発症します。

それらは、発症して直ぐに死に至るような病気ではありませんが、長期間にわたってつらい症状が継続します。また、時間がたつと、患部組織の障害や構造変化(変形)を伴い、しばしば患部組織が有する本来の機能に障害をきたすことが問題となります。

最新の免疫学の研究で、慢性炎症が「万病の素」になっていることがわかってきました。

慢性炎症が深く関わっている疾患としては、「がん」「肥満、糖尿病」「脂質異常症」「心筋梗塞」「脳梗塞」「肝炎・肝硬変」「アトピー性皮膚炎」「喘息」「関節リウマチ」「老化、認知症、アルツハイマー病」「うつ病」「潰瘍性大腸炎」などがあり、現代人を悩ませる病気ほぼすべてに関与しているとといっていい。

慢性炎症は「サイレントキラー」と呼ばれ、はっきりとした自覚症状のないまま進行し、本人が異常を自覚したときには身体に回復不能なダメージが及んでいることが多い。それゆえ、慢性炎症は「死に至る病」と言われる、実に怖い病気なのです。